「疲れやすいのは、マグネシウム不足だから?」
「サプリを飲んだ方が早い?」
健康情報で名前を見かける一方、マグネシウムを普段の食事でどう取ればよいかは、意外と分かりにくいものです。
最初に大切なことをお伝えします。マグネシウムは体に必要なミネラルですが、特別な食品やサプリだけに頼る必要はありません。穀類、豆類、種実類、野菜類など、複数の食品に分けて含まれています。
また、疲労感や筋肉のけいれんといった症状だけで、マグネシウム不足とは判断できません。体調不良が続く場合は、栄養素一つの問題と決めつけないことも重要です。
この記事では健康な成人に向けて、最新の食事摂取基準と食品成分表をもとに、日常の食事で無理なく取る方法を紹介します。
マグネシウムは、体の中で何をしている?
マグネシウムは、体内のさまざまな酵素反応やエネルギー産生を支える必須ミネラルです。筋肉の収縮、神経情報の伝達、骨の構成などにも関わります。成人の体内には約25gあり、その50〜60%は骨や歯に存在するとされています【1】。
ただし、「必要な栄養素である」ことと、「多く取るほど体調がよくなる」ことは同じではありません。まずは年齢・性別に応じた推奨量を知り、食事全体を見直すための目安として使いましょう。
1日にどれくらい必要?成人の推奨量
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、成人のマグネシウム推奨量を次のように定めています。
| 年齢 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 18〜29歳 | 340mg/日 | 280mg/日 |
| 30〜49歳 | 380mg/日 | 290mg/日 |
| 50〜64歳 | 370mg/日 | 290mg/日 |
| 65〜74歳 | 350mg/日 | 280mg/日 |
| 75歳以上 | 330mg/日 | 270mg/日 |
妊婦には年齢区分に応じた推奨量へ40mg/日の付加量が設定され、授乳婦の付加量は0mg/日です。詳しい年齢区分を含む基準は、厚生労働省の表で確認できます【2】。
推奨量は、ある一日に必ずぴったり合わせるノルマではありません。習慣的な食事を考える基準であり、一日届かなかっただけで欠乏症と判断するものでもありません。
マグネシウムが多い食べ物を「1回分」で比較
食品ランキングは100g当たりで並ぶことが多いですが、乾物や調味料など、実際には100gも食べない食品が上位に来ることがあります。日々の献立には、普段食べる量へ換算した数字の方が役立ちます。
| 食品 | 1回分の例 | マグネシウム量の目安 | 使い方 |
|---|---|---|---|
| 納豆 | 50g | 50mg | ご飯に添える、あえ物にする |
| 木綿豆腐 | 150g | 約86mg | 冷ややっこ、みそ汁、炒め物に |
| 玄米ご飯 | 150g | 約74mg | いつもの主食の一部または全部に |
| アーモンド(いり・無塩) | 20g | 62mg | 間食や料理のトッピングに |
表は、文部科学省「食品成分データベース」の可食部100g当たりの値から計算し、小数点以下を四捨五入しています。納豆は100mg、木綿豆腐は57mg、玄米ご飯は49mg、無塩のいりアーモンドは310mgをもとにしています【3】【4】【5】【6】。
これは標準的な食品の参考値です。品種、製法、調理、水分量によって変わります。とくに豆腐は凝固剤などによる違いがあるため、商品の栄養成分表示にマグネシウム量があれば、その表示を優先してください。
「一番多い食品」を大量に食べなくてよい
上の4品を例の量ですべて食べると、計算上は合計約272mgです。さらに、その日に食べる野菜、魚、ほかの穀類などに含まれる分が加わります。
これは4品を毎日必ず食べる献立ではありません。納豆と豆腐を同じ日に重ねる必要もなく、食べられる食品を朝・昼・夜・間食へ分ける考え方を示したものです。
ナッツは少量でもマグネシウムを取りやすい一方、エネルギーも高めです。「体によいから」と袋のまま食べ続けず、最初に食べる分を小皿へ出すと量を把握しやすくなります。
研究で分かることは「不足を補う大切さ」。万能な効果ではない
マグネシウムの摂取量と、血圧、血糖、骨などとの関係は多く研究されています。ただし、観察研究で「多く取る人ほど健康状態がよい」という関連が見られても、マグネシウムだけが原因とは限りません。
マグネシウムを多く含む食事は、豆、全粒穀物、野菜、ナッツなども多くなりやすく、食物繊維やほかの栄養素、運動習慣などの影響も受けます。
2024年のアンブレラ・メタ解析は、マグネシウムのサプリメントと血圧を調べたランダム化比較試験のメタ解析10件、計8,610人を統合しました。平均すると、収縮期血圧は1.25mmHg、拡張期血圧は1.40mmHg低い結果でした【7】。
これは平均的には小さな差で、しかもサプリメントを使った試験です。食品からマグネシウムを取れば同じ幅だけ血圧が下がる、治療の代わりになる、という結果ではありません。高血圧などで治療中の人は、食事やサプリを理由に薬を中断せず、主治医の指示を優先してください。
健康な人の日常では、一つの数値を変える目的で大量に取るより、必要量を満たしやすい多様な食事を作ることが現実的です。
食事で増やすなら、4つの「置き換え」が続けやすい
マグネシウムを含む食品を、今の食事へすべて追加する必要はありません。食事量がすでに十分なら、いつもの食品の一部を置き換える方が、エネルギー量を増やしにくくなります。
1. 朝食の一品を、納豆や豆腐にする
朝食がご飯と汁物だけなら、納豆を添える、みそ汁へ豆腐を入れる方法があります。パンの日なら、無理に納豆を組み合わせる必要はありません。ヨーグルトや卵なども含め、朝食全体で主食とたんぱく質源がそろう形を探しましょう。
納豆のたれやみそ汁は食塩も含むため、マグネシウムを増やす目的で調味料まで増やさないことがポイントです。
2. 白米の一部を、食べやすい割合の玄米へ替える
玄米が好きなら、主食からマグネシウムを取る選択肢になります。最初からすべて玄米にせず、白米に少量混ぜる、週に数回だけ選ぶ方法でも構いません。
玄米は白米より硬さや香りがあるため、表示どおりの浸水・炊飯を行い、よくかんで食べます。消化器の病気などで食物繊維を控えるよう指示されている場合は、その指示を優先してください。
3. 間食の一部を、無塩ナッツへ替える
いつも菓子を食べる時間があるなら、その一部を無塩のナッツへ替えられます。アーモンド20gは、手の大きさや粒の大きさで誤差が出るため、最初の一度だけ量っておくと自分の一回分が分かります。
ナッツアレルギーがある人は避けてください。小さな子どもや、かむ力・飲み込む力が低下している人には、粒のままのナッツは窒息事故の原因になり得ます。
4. サラダだけでなく、豆をスープや煮込みへ入れる
マグネシウムは納豆や豆腐だけでなく、ひよこ豆、レンズ豆、いんげん豆などにも含まれます。加熱済みの水煮や蒸し豆なら、スープ、カレー、ミートソースへ混ぜられます。
豆でお腹が張りやすい人は、少量から試してください。水煮や味付き商品は食塩相当量も確認します。
一日の食事へ分けて置く例
次は、マグネシウムを取る機会を分散させるための一例です。これだけで一日の栄養がすべてそろうという意味ではなく、食欲、体格、活動量に合わせて主食・主菜・副菜の量を調整してください。
朝:納豆ご飯と野菜の小鉢
- ご飯に納豆50gを添える
- 野菜やきのこの小鉢を組み合わせる
- 汁物を付けるなら、濃い味にしすぎない
昼:主食、魚か肉、野菜をそろえる
- 定食なら、主食・主菜・副菜があるものを選ぶ
- 麺や丼だけの日は、豆や野菜の小鉢を一品足す
- マグネシウムだけでなく、たんぱく質や食物繊維も見る
間食:アーモンド20gを取り分ける
- 無塩の商品を選ぶ
- 袋から直接食べず、一回分を小皿へ出す
- 菓子へ追加するのではなく、間食の一部と置き換える
夜:玄米ご飯と木綿豆腐を使った主菜・副菜
- 玄米が苦手なら、白米へ混ぜる
- 豆腐は冷ややっこ、炒め物、鍋など食べやすい料理にする
- 魚、肉、卵など、ほかのたんぱく質源も一週間の中で組み合わせる
一日で完璧にしようとせず、「朝の納豆」「週3回の玄米」「間食のナッツ」のように、続けられる場面を一つ決める方が習慣にしやすくなります。
「足りないサイン」を症状だけで決めない
マグネシウム不足について調べると、疲労感、食欲低下、吐き気、筋肉のけいれんなど、幅広い症状が挙げられます。しかし、これらは睡眠不足、脱水、貧血、薬の影響、ほかの病気などでも起こり得ます。
米国NIHは、健康な人では食事からの摂取量が一時的に少なくても、腎臓が尿への排出を抑えるため、明らかな欠乏症状は一般的ではないと説明しています。一方、長期間の摂取不足、消化管の病気、2型糖尿病、アルコール依存、高齢などでは不足のリスクが高まる場合があります【8】。
症状の一覧に当てはめてサプリを始めるのではなく、強い症状、繰り返すけいれん、動悸、しびれ、長引く体調不良がある場合は医療機関へ相談してください。
サプリメントは「食品と同じ上限」ではない
日本人の食事摂取基準では、成人のマグネシウムの耐容上限量を、通常の食品以外から1日350mgとしています。これはサプリメントなどから取る量の上限であり、食事に含まれる分を合わせた総量の上限ではありません【2】。
サプリメントやマグネシウムを含む薬を多く取ると、下痢、吐き気、腹痛などが起こることがあります。腎機能が低下している人では、体外へ排出しにくくなり、過剰のリスクが高まります【8】。
また、マグネシウムのサプリメントは、一部の抗菌薬や骨粗鬆症治療薬の吸収に影響する可能性があります。利尿薬や胃酸を抑える薬がマグネシウムの状態へ影響する場合もあります【8】。
次に当てはまる人は、自己判断でサプリを追加する前に医師・薬剤師へ相談してください。
- 腎臓の病気がある
- 定期的に薬を飲んでいる
- 妊娠中・授乳中である
- 下痢や嘔吐が続いている
- 血液検査で異常を指摘されている
- すでに複数のサプリやマグネシウムを含む便秘薬・制酸薬を使っている
治療としてマグネシウムが必要な場合は、一般向けの上限ではなく医療者の指示に従います。
よくある質問
マグネシウムを取れば、疲れはなくなりますか?
マグネシウムはエネルギー産生に関わりますが、取れば誰でも疲労が改善するとは言えません。疲労の原因は睡眠、ストレス、食事量、貧血、感染症など多岐にわたります。食事を整えても強い疲労が続く場合は、医療機関へ相談してください。
チョコレートで補ってもよいですか?
カカオを含む食品にもマグネシウムは含まれます。ただし、チョコレートは商品によって砂糖や脂質、エネルギー量が大きく異なります。マグネシウムのために量を増やすより、楽しむ量を決め、豆、穀類、野菜、ナッツなど複数の食品から取る方が食事全体を整えやすくなります。
海藻はマグネシウムが多いですか?
海藻も供給源の一つです。ただし、乾燥状態の100g当たりで比較すると多く見えても、一回に食べる量は少ないことがあります。実際に食べる量へ換算し、特定の海藻だけに頼らないようにしましょう。味付き商品や汁物では食塩量にも注意します。
にがりを飲めば効率よく取れますか?
にがりは食品を作る用途の製品であり、健康効果を目的に多量に飲むものではありません。濃度や使用方法は商品によって異なり、取りすぎると下痢などを起こす可能性があります。表示された用途・使用量を守り、摂取量を増やす目的では使わないでください。
次の食事で、一つだけ置き換える
マグネシウムは、珍しい健康食品を探さなくても取れます。納豆、豆腐、玄米、豆、ナッツなど、普段のスーパーで買える食品に分かれて含まれています。
まずは次の食事で、次のうち一つを試してみてください。
- 朝食に納豆を添える
- みそ汁や鍋へ豆腐を入れる
- 白米の一部を玄米へ替える
- いつもの間食の一部を無塩ナッツへ替える
- スープやカレーへ加熱済みの豆を加える
一つの栄養素を完璧に計算するより、複数の食品を繰り返し選べる食卓を作ることが大切です。食べやすい方法を一つ続け、慣れたら次の選択肢を増やしていきましょう。
※本記事は2026年9月16日時点で確認した研究・公的資料に基づく、一般的な健康・栄養情報です。個別の診断や治療、疾病の予防・改善効果を保証するものではありません。症状がある場合、治療中の病気や食事制限がある場合、薬やサプリメントを使用している場合は、医師・薬剤師・管理栄養士へご相談ください。