「減塩したい」と思っても、家の料理をすべて薄味にするのは続きにくいものです。そもそも食塩は、料理中に振る塩だけでなく、しょうゆ、みそ、麺のスープ、パン、惣菜などにも含まれています。
最初に見直したいのは、好きな食事を丸ごとやめることではなく、食塩が重なる場面です。 たとえば、麺の汁を残す、いつもの商品と食塩相当量を比べる、食べる前の「追いしょうゆ」をやめる。小さな変更でも、続けば食事全体の食塩を減らせます。
この記事では、健康な成人を主な対象に、減塩の根拠と実践方法を整理します。
食塩を取りすぎると、なぜ気にした方がいい?
ナトリウムは体に必要な成分ですが、通常の食生活で不足することはほとんどありません。一方、食塩の取りすぎは血圧が高くなる要因の一つです。高血圧は心臓や血管の病気の重要な危険因子でもあります【1】【2】。
減塩と血圧の関係は、単なる「健康に良さそう」という印象ではありません。成人を対象とする無作為化比較試験133件、計1万2,197人をまとめた研究では、食事のナトリウム量を減らした群の血圧が、比較群より平均して収縮期で約4.3mmHg、拡張期で約2.1mmHg低い結果でした【3】。
ただし、これは試験全体の平均です。「しょうゆを一回減らせば4mmHg下がる」という意味ではありません。減らした量、元の血圧、食事全体や体質によって個人差があります。血圧が正常な人にも減塩は無関係とは言えませんが、血圧が高い人ほど変化が大きい傾向が報告されています【4】。
1日の食塩は何gが目安?
日本人の食事摂取基準(2025年版)は、生活習慣病の発症予防を目的とする成人の目標量を、男性は1日7.5g未満、女性は6.5g未満としています。2023年の国民健康・栄養調査での20歳以上の平均摂取量は、男性10.7g、女性9.1gでした【1】。
一方、WHOの成人向け勧告は食塩1日5g未満です。日本の目標量と数字が違うのは、対象や基準の設定方法が異なるためです。どちらも「その量を1g超えた日に突然危険になる」という境界線ではありません【5】。
まずは自分の食事のどこから食塩を取っているかを知り、今より少し減らすことを目標にしましょう。医師から個別の食事指示を受けている場合は、その指示が優先です。
「塩を振っていないのに多い」を見つける
食塩量を知る手がかりは、味の濃さだけではありません。加工食品や惣菜を買うときは、栄養成分表示の食塩相当量を見ます。容器包装された一般用加工食品では、原則として食塩相当量の表示が義務づけられています【6】。
見る順番は三つです。
- 何に対する表示か:「100g当たり」「1食当たり」「1袋当たり」を確認する
- 実際に食べる量はいくらか:2食分を食べれば、食塩相当量もおおむね2倍になる
- 一緒に食べるものは何か:主食、主菜、汁物、たれを足して考える
たとえば「100g当たり食塩相当量1.5g」の食品を200g食べれば、その食品から取る量は3.0gです。これは計算例であり、特定の商品を指す数字ではありません。「減塩」「塩分控えめ」という表面の言葉だけで決めず、同じ量を食べる場合の表示を比べると判断しやすくなります。
なお、表示の「食塩相当量」はナトリウムを食塩に換算した値です。表示がある商品の食塩量を、家庭で使った塩の量だけから推定しないようにしましょう【6】。
味を楽しみながら減らす、四つの場面
1. 麺類は、まず汁を飲み切らない
ラーメンやうどんの汁を残すと、料理によっては食塩を2〜3g程度減らせると厚生労働省は紹介しています。ただし、麺や具にも食塩が含まれるため、汁を残せば食塩がゼロになるわけではありません【2】。
「今日は半分残す」からでも構いません。スープを最後の一滴まで飲む習慣がある人には、取りかかりやすい変更です。
2. 調味料は、かける前に味を確かめる
出来上がった料理にしょうゆやソースを足す前に、一口食べてみます。足りないときは小皿に出し、少量をつける。調理時には、だし、レモンなどの酸味、こしょうやしょうがなどの香りを使う方法もあります【7】。
「酢や香辛料なら無制限」という意味ではありません。市販のたれやドレッシングには食塩が含まれるものもあるので、使う量と表示を確認してください。
3. 買い物では、同じ用途の商品を比べる
いつものみそ汁、スープ、パン、惣菜、缶詰を、似た商品の食塩相当量と比べます。「1袋」と「100g」をそのまま比べないことがポイントです。
減塩商品も選択肢ですが、「減塩だから多く使ってよい」と考えると、結果的に食塩量が増えることがあります。まずは普段と同じ量で比較し、味が合うものを探しましょう。
4. 食卓の中で「塩味の重なり」を減らす
朝なら「ハム+チーズ+スープ」、昼なら「麺+漬物」、夜なら「味の濃い主菜+みそ汁」のように、塩味のある食品が重なることがあります。一品だけを悪者にせず、同じ食事にいくつ重なっているかを見ます。
たとえば、味のついた主菜の日は汁物を具だくさんにして汁を少なめにする、漬物を別の日に回す、加工肉を卵や豆腐に替えるといった方法があります。加工肉の頻度を見直す考え方は、ハム・ソーセージと健康の記事でも紹介しています。
「減塩の塩」なら誰でも使っていい?
食塩の一部をカリウムに置き換えた代替塩には、ナトリウムを減らす助けになるものがあります。ただし、腎機能が低下している人や、カリウムの排出に影響する病気・薬がある人には適さない場合があります。WHOの2025年の指針も、カリウム入り代替塩の提案対象から、そのような人を除いています【8】。
持病や服薬がある場合は、自己判断で切り替えず、医師や管理栄養士に確認してください。多くの人にとっては、まず汁を残す、調味料を計量する、商品を比べるといった方法から始められます。
よくある疑問
血圧が正常なら、減塩は不要ですか?
血圧が正常でも、食塩を多く取る習慣をそのままにしてよいとは言えません。減塩の血圧への効果は平均して小さめの場合もありますが、試験の解析では高血圧の有無にかかわらず、ナトリウム摂取量と血圧に関係が見られました【4】。
水をたくさん飲めば、塩分を帳消しにできますか?
水を多く飲むことを、食塩の取りすぎを相殺する方法とは考えないでください。食塩の摂取量を見直すことが基本です。水分摂取を制限されている人は、医療者の指示に従ってください。
一食で塩分が多かったら、次を抜いた方がいいですか?
一食を理由に、次の食事を抜く必要はありません。次の食事で汁物や調味料を控えめにし、野菜やたんぱく質源を含む普段の食事へ戻しましょう。極端な調整より、繰り返す食事を少しずつ整える方が続けやすくなります。
次の一食でできること
まず一つだけ選ぶなら、食べる前に食塩が重なる場所を確認することです。
- 麺の日は汁を残す
- しょうゆやソースは、味を見てから少量をつける
- 買うときは、同じ量当たりの食塩相当量を比べる
- 味の濃い主菜の日は、汁物や漬物を重ねすぎない
減塩は、食事のおいしさを手放すことではありません。自分が無理なく変えられる一品から始め、続けられる形を探してください。
※本記事は2026年9月29日時点で確認した公的資料と研究に基づく、一般的な健康・栄養情報です。個別の診断、治療、疾病の予防・改善効果を保証するものではありません。高血圧、腎臓病などで治療中の方、食事や水分の制限がある方、服薬中の方、妊娠・授乳中の方は、医師・管理栄養士による個別の指示を優先してください。