野菜をもう一皿食べたい。でも、買い物や調理の手間を毎日増やすのは難しい。そんなとき、いつものご飯に混ぜる「もち麦」が選択肢になります。
もち麦のよさは、特別な献立を作らなくても、主食から食物繊維を取りやすくなることです。白米を炊くときに少し混ぜるだけなので、おかずを一品増やすより手軽に試せます。
さらに、大麦に含まれる食物繊維は、食後の血糖やコレステロールに関する研究でも注目されています。いつものご飯を少し変えることが、食事を整えるきっかけになる。 これが、もち麦を取り入れる魅力です。
押し麦との違いから、健康効果の根拠、おいしく続ける食べ方まで見ていきましょう。
もち麦と押し麦は、何が違う?
もち麦は、もち米とは別の食品です。もち性という性質を持つ「大麦」 を指します。農林水産省によると、大麦には米と同じように「もち性」と「うるち性」があり、もち性大麦はうるち性大麦より食物繊維が多くなる傾向があります。水溶性食物繊維の一種「β-グルカン」も特徴です【1】。
一方、押し麦は、大麦を加工した形の名前です。文部科学省の食品成分データベースでは、精白した粒を蒸気で加熱し、平たく押した製品と説明されています【2】。
つまり、「もち麦」は大麦の性質、「押し麦」は加工方法を表しています。
| 名前 | 何を表しているか | 買うときに見るポイント |
|---|---|---|
| もち麦 | もち性の大麦 | 食感の好み、食物繊維の表示、炊飯方法 |
| 押し麦 | 大麦を平たく加工したもの | 食物繊維の表示、価格、いつもの米との混ぜやすさ |
| 雑穀ミックス | 複数の穀物などを混ぜた商品 | 大麦以外の原材料、配合、アレルギーに関する表示 |
食物繊維やβ-グルカンの量は、品種や商品によって異なります。買うときは、同じ100g当たりなど、表示の単位をそろえて比べると分かりやすくなります。
押し麦も、食物繊維を増やす選択肢です。味や価格も比べながら、食卓に取り入れやすいものを選んでください。
白米に混ぜると、食物繊維はどれくらい増える?
比較の土台として、公的な成分表を見てみます。文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」では、炊いた後の可食部100g当たりの値は次のとおりです【3】【4】。
| 成分 | 白米のご飯 | 炊いた押し麦 |
|---|---|---|
| エネルギー | 156kcal | 118kcal |
| 食物繊維 | 1.5g | 4.2g |
| 炭水化物 | 37.1g | 28.5g |
表の大麦は、押し麦だけを水で炊いたものです。もち麦商品の成分は、各商品の表示で確認できます。白米と押し麦は炊飯後の水分量も違うため、比較するときは「乾燥した状態」か「炊いた後」かもそろえましょう。
一杯150gなら、どれくらい変わる?
量のイメージをつかむため、炊いた白米105gと、炊いた押し麦45gを合わせて、合計150gにした例を考えます。
- 白米だけ150g:食物繊維は約2.3g
- 白米105g+押し麦45g:食物繊維は約3.5g
- この例で増える量:約1.2g
※上の成分値を使った概算です。割合は炊飯後の重量で示しており、炊く前の米と麦の配合とは異なります。
この例では、いつもの一杯から食物繊維を約1.2g増やせます。日本人の食事摂取基準(2025年版)では、例えば30〜64歳の一日の食物繊維の目標量は、男性22g以上、女性18g以上です【5】。
もち麦ご飯に、豆、野菜、きのこ、果物なども組み合わせると、一日を通して食物繊維を取りやすくなります。
もち麦の健康効果は、どこまで分かっている?
もち麦でよく耳にするβ-グルカンは、水溶性食物繊維の一種です。農林水産省は、大麦のβ-グルカンがでんぷんの消化を抑え、糖の吸収を穏やかにすることを説明しています【1】。
この働きは、人を対象にした研究でも調べられています。
食後の血糖上昇を穏やかにする働き
2026年2月に公表された、31件の比較試験をまとめた研究では、大麦を取り入れた食事で、食後30分、60分、120分の血糖値が比較対象の食事より低くなりました。一方、長期的な空腹時血糖やHbA1cには、明確な変化は確認されませんでした【6】。
HbA1cは、一定期間の血糖の状態を反映する指標です。現在の研究では、食後の血糖上昇を穏やかにする働きには根拠があり、長期的な血糖管理への効果はまだ明確ではないと整理できます。
LDLコレステロールへの効果も報告されている
大麦のβ-グルカンについては、血中脂質を調べた比較試験もあります。
2016年に14件の無作為化比較試験、計615人をまとめた研究では、大麦のβ-グルカンを取り入れた食事で、比較対象の食事よりLDLコレステロールが低下しました。LDLを調べた試験の期間は中央値で4週間でした【7】。
研究ではβ-グルカンの摂取量を管理しているため、家庭の麦ご飯一杯でどの程度変わるかまでは分かりません。
こうした研究は、大麦を主食の選択肢にする理由になります。普段の食事では、まず白米の一部を置き換え、食物繊維を増やすところから始めましょう。
もち麦ご飯は何割から?「続けられる量」を先に決める
初めてなら、商品の炊飯例を参考に、少量から混ぜると取り入れやすくなります。もち麦の割合が増えるほど、粒の食感や風味も変わります。まず一度炊いてみて、好みとお腹の調子に合わせて調整しましょう。
炊飯するときは、商品に書かれた水加減を使う
大麦の商品には、洗う必要があるもの、洗わずに使えるもの、浸水を勧めるものなどがあります。パッケージの炊き方を確認してから準備しましょう。
- 米と麦の量を決める:まずは表示された配合例を確認する
- 米の準備をする:米をとぎ、表示どおりに水を入れる
- 麦の準備と追加の水を確認する:洗浄・浸水の要否と、使用量に応じた水加減に従う
- 炊飯後は全体を混ぜる:一杯の中で麦が偏らないようにする
- 食べやすさを確かめる:次回の割合は、食感とお腹の様子を見て調整する
麦の量を変えたら、追加する水も商品の説明に合わせて調整します。
炊飯の手間を省きたいなら、もち麦入りのパックご飯も選択肢です。一食分の量と、食物繊維・エネルギーの表示を確認すると、普段の食事に合わせて選びやすくなります。
一杯のご飯に、何を組み合わせる?
もち麦ご飯は、納豆や焼き魚など、いつものおかずによく合います。主菜と野菜のおかずを添えて、一食を整えましょう。
| 場面 | 組み合わせの例 | 続けるための工夫 |
|---|---|---|
| 朝食 | もち麦ご飯+納豆+小松菜の小鉢 | 前日のご飯を一食分ずつ取り分けておく |
| 昼食 | もち麦入りおにぎり+豆腐や魚の一品+野菜 | おにぎりだけで済ませず、主菜と副菜を選ぶ |
| 夕食 | もち麦ご飯+焼き魚+きのこと野菜のおかず | ご飯の変更と同時に、おかずの品数まで増やそうとしない |
ご飯に混ぜる食感が苦手なら、商品に書かれた方法でゆで、スープやサラダの具材として使う方法もあります。最初から毎食食べようとせず、「夕食のご飯を炊く日に使う」など、場面を一つ決めるだけでも十分です。
豆を使う方法も知っておくと、もち麦が合わない日にも食物繊維を取る選択肢が残ります。
お腹が張るときは、無理に増やさない
食物繊維を多く取ると、人によってはガスやお腹の張りが気になることがあります。米国のNIDDKも、食物繊維の取り過ぎがガスの症状につながる場合があると説明しています【8】。
張りが気になるなら、麦の割合を減らして様子を見ましょう。強い痛みや長引く不調がある場合は、医療機関へ相談してください。
また、大麦はグルテンを含む穀物です。 セリアック病では、大麦も避ける必要があります【9】。
大麦などにアレルギーがある人は、原因となる食品を避け、雑穀ミックスの原材料も確認してください。糖尿病や消化器疾患などで食事療法を受けている人は、主食量や食品の変更について医師・管理栄養士の指示を優先します。
よくある疑問
もち麦ご飯なら、大盛りにしても大丈夫ですか?
もち麦にも炭水化物とエネルギーがあるので、まずはいつもの一杯の中で置き換えましょう。量は、活動量やおかずとの組み合わせに合わせて調整してください。
玄米ともち麦、どちらを選ぶべきですか?
白米に少量ずつ混ぜたいならもち麦、玄米の風味や食感が好きなら玄米など、使いやすさから選べます。どちらも苦手なら、白米を食べながら豆や野菜で食物繊維を補う方法もあります。
麦茶でも、もち麦と同じ食物繊維が取れますか?
食物繊維を増やすなら、麦ご飯などで粒を食べる方法を選びましょう。麦茶は大麦を抽出した飲み物で、粒を食べる場合とは栄養の取り方が異なります。
毎日食べないと、意味がありませんか?
毎日食べることを義務にする必要はありません。まずは取り入れやすい食事で使い、ほかの日は豆、野菜、果物なども組み合わせます。特定の食品を欠かさず食べることより、食事全体を無理なく続けられる形にすることを優先しましょう。
次にご飯を炊くとき、小さく試してみる
もち麦の魅力は、いつものご飯から食物繊維を増やせる手軽さです。主食は繰り返し食べるものだからこそ、小さな工夫を続けやすい場所でもあります。
次に買うときは、食物繊維の表示と炊飯方法を確認する。次に炊くときは、少量から混ぜる。食べた後は、味とお腹の様子を確かめる。
気に入れば次も使い、合わなければ押し麦や豆など、別の方法を試す。一杯のご飯を少し変える工夫を、食事全体を整える習慣につなげていきましょう。
※本記事は2026年10月5日時点で確認した研究・公的資料に基づく、一般的な健康・栄養情報です。個別の診断、治療、服薬指示を行うものではなく、疾病の予防・改善効果を保証するものではありません。治療中・服薬中や食事制限がある場合は、医師・管理栄養士などから受けている個別の指示を優先してください。





